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2010年8月26日 (木)

鋸岳(甲斐駒):灼熱の戸台川河原歩きが核心

2010年8月22・23日

本当に今年は良い天候が続いている。残暑はかなりのものである。おかで、夏バテ気味で体に力が入らない。あまり、モチベーションが上がらないが、積み残した宿題をやっつけておきたい。今回は、先々週、マイカートラブルのため、ご近所敗退した課題を消化することにした。

仙流荘先の駐車場で車中泊、朝は所定の時間より早く複数台のバスが運行を始めた。始発のバスに乗って、北沢峠には6:30頃到着した。甲斐駒ケ岳へは仙水峠のルートを選んだ、理由は仙水小屋で美味しい水を補給するためである。

無事、水を補給すると、2日分の水4.5Lで、ザックはずっしり重くなった。なお、今回使用したザックは、オスプレーのケストレル28である(ずいぶん使いこんできたので、そのうちコメントを残したい)。さすがにテント泊の山行では60Lザックを使うが、それ以外はすべてこのザックで済ませている(日帰り~2・3泊の小屋泊)。今回は、ツェルト泊で、シュラフ、30mザイル、登攀用具、食料、衣類、ヘルメット、4.5L水ほか、それなりの物量ではあったが、なんとか詰め込んだ。

汗で衣服を濡らさないよう、ゆっくりと登った。今日は、明日への準備の日である。疲労を溜めないことが今日のテーマである。

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(駒津峰からみた鋸岳、ここから見るとありふれた山様である)

六万石から先は巻道を選んだ、こちらのほうが甲斐駒らしい風景を堪能できる。頂上には、10:15頃到着、12年ぶりである。ここから先は、ひと気が全くない。
途中、雷鳥と出会う。

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(この雷鳥、全く逃げようとしない。なぜかと思ったら、そばに雛がいた。人間も見習うべきである。)

頂上から1時間ほどで六合目石室に到着。屋根が葺き替えられ、もはや石室ではなく、立派な小屋である。土間も使えば、大勢泊まれそうである。当初はここに宿泊する予定であったが、午前中で停滞するのは早すぎる。さらに先に進むことにする。

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(上から小屋を発見、良い場所にあると思う)

これから先は、アップダウンがあって、思ったよりも体力を消耗した。地図には三ッ頭の頂上は北側を巻くと記してあるが、実際には巻かない。

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(右から三ッ頭、遠くに鋸、左は無名峰)

途中、女性2名のパーティーとすれ違う。お疲れのご様子。このルートで初めて人に会った。
中の川乗越にも早い時間にたどり着いた。明るいうちに鋸岳まで行けそうであるが、疲れた体で、核心部は通過したくない。適当な場所にツェルトを張って、体を休めた。上空を飛ぶ飛行機がうるさく、しばしば目が覚めた。

翌朝、日の出とともに出発。

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(朝日に照らされる第2高点への登り、ガレたルンゼをつめてゆく)

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(第2高点から見た第1高点:鋸岳)

第2高点から尾根沿いを戸台川方向へ下る。大ギャップ下の沢で、しばしルートを見失う。少し戻って見渡すと、沢の対岸の木にリボンを発見(視界が悪いと発見できないと思う)。沢を少しだけ下って、右に斜上するのが正解。大ギャップ方向へ登ってはいけない。

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(写真中央のバンドがルート、その先(左)の木にリボンのマーキング。見えないかも)

その斜上したバンドを登ると、その上部に鹿窓が見える。もっと先だと思っていたので、意表を突かれた。ジグザグに登ると、鎖に導かれる。あまり難しくはないので、鎖を使わずに登った。ただし、岩が非常にもろく、石を落してしまう。ほかに人がいなくて幸いであった。

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(鹿窓が見えてきた)

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(振り返り見た鹿窓への登り、浮石が非常に多いのが分かる)

鹿窓を抜け、第一高点へと向かう。小ギャップを通過し、アイゼンの痕が残る岩場をしばらく行くと、頂上である。ここまでくると、何人かの登山者と出会う。

頂上には7:40に到着。これまで歩んできたルートを振り返って、ご満悦である。戸台川対岸の林道もはるか下にある。今日はこれからさらに下まで下り、遠く戸台大橋までいかねばならない。

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(これから下る戸台川とその下流、はるか向こう雲の下に仙流荘側の田園が見える。遠いなあ)

角兵衛沢を下る。ザレた斜面が有名である。右岸と左岸で様相が大きく異なる。どちらを選ぶかは好みの問題だと思う。細かい礫の右岸は、踏むたびに大きく崩れる。登りは大変だろう。ただし、下りは雪道のように、膝に負担がかからないのが気に入った。一気に下る。やがて樹林帯に入る。入る人が少ないせいか、道は荒れていない。堆積した落ち葉のクッションが心地よい。実に、歩きやすい道である。この下り、穂高の白出沢よりは負担が少ないと感じた。
10:20、戸台川を渡渉した。この時間なら、予定していた戸台大橋のバスに十分間に合う。余裕ですな。ところが、この先、今回の山行の最大の難関が待っていた。左岸を歩いている間は、木々の木陰を選んで歩けるのでさほどではなかったが、再度、右岸に渡ってからは日差しを遮るものはなく、加えて河原の石からの放射熱がものすごい。河原全体が熱源である。朦朧とした。暑さには強いつもりであったが、かなり堪えた。この間に、水を1.5Lほど消費した。

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(良い天気、日差しが強く、河原は暑い→熱い)

戸台川の河原には、紫色の花が咲き乱れていた。帰化植物とのこと、名前を教えてもらったが、思い出せない。

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(渡渉が気持ち良い)

戸台大橋には12:30頃到着、臨時のバスが来たのであまり待たずに駐車場まで戻ることができた。仙流荘で風呂をあびてさっぱりした。充実した山行であった。

追記:

①特に危ないのは大ギャップ下の沢~小ギャップまでの間で、その距離はそれほど長くない。難所には鎖が設置されているので、岩ができる人ならザイルなしで通過できる。ただし、落石の危険性が高く(ヘルメット必須)、通過に際しては、登山者同志で声を掛け合って安全を確認する必要がある。鹿窓下の鎖場は大なり小なり落石が必ず生じると考えるべき。当たり前だが、複数の人間が同時に鎖に取りついてはいけない。

②鎖が設置され、以前よりも通過しやすくなったとはいえ、危険が解消されたわけではない。まだまだ、安易に入り込んではいけないルートだと思う。

③ザイルほか簡単な登攀具を持参したが、使う場面はなかった。ただし、沢が増水した際の渡渉に備えて持参したものであり、余計な荷物だとは思っていない。

④甲斐駒ヶ岳から鋸岳にかけて、ルート上には的確なマーキングが施してあった。センスの良さを感じた。

⑤人が少なく、静かな山を楽しめる。逆に、何かあっても助けは得にくい。

⑥初日、北沢峠へ向かう林道で、5頭のシカの群れと出会った。バスの客は写真撮影で忙しい。小生の脳裏に浮かんだ言葉は「ジビエ」であった。下山後、仙流荘の食堂でジビエ料理のメニューを発見。シカの個体数を減らすのに協力すべく、鹿肉ソースカツ丼を注文した。伊奈といえばソースカツ丼である。イノシシ料理もあったが、もののけ姫の乙事主(おっことぬし)の形相を思い出して、なんだか食す気がしない。

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コメント

鋸岳の記事、大変興味深く読ませて頂きました。
私は岩登りなどはやっていませんが、今回、記事を読んで、特に登攀具は使わなかったとのこと、ずっと前から鋸岳を登ろうと情報収集していたので、軽く驚きました。持っていくべきでしょうけれど、鋸岳も登攀具なしに登れてしまうということなのですね。今週末にでも行ってみようかと思っています。

投稿: 岳(たけ) | 2010年9月18日 (土) 15時41分

岳(たけ)さん
コメントありがとうございます。
第一高点と第二高点の間が特に危険なのですが、岩が非常に脆いことがリスクを高めています。ルートを外れると特にこれが顕著で、滑落の危険性が一気に高まります。正しいルートを通ることを心がけてください。ルートを外すと、戻ることさえ困難になります。少しでもおかしいと思ったら、落ち着いて周囲をよく観察してください。
本年も、何件かの滑落事故があったようです(死亡事故もありました)。お気をつけて、安全第一で山を楽しんでください。
なお、小生は登攀具を使いませんでしたが、別の大ギャップを通過するルートでは必須です。力量・ルートに応じて判断してください。

投稿: shuntasan | 2010年9月18日 (土) 21時34分

鹿窓が目指す急な上りの道はどんな道のりでしたか?今年8月に私の親父がその場所で滑落しなくなりました。登山経験もなく自分でその場所までもいけなく父が亡くなった場所にさえいけていない。様々な写真を探しおそらくこのサイトの写真が一番わかりやすいものでした。他の写真があればぜひ見せて下さい

投稿: 梨子本匡孝 | 2010年11月21日 (日) 00時50分

梨子本様
お父様のこと、心よりお悔み申し上げます。
残念ながら、鹿窓直下の写真はここで紹介したもの以外は持ち合わせていません。
お許しください。

登山をされないため、現場に行くことができないご無念、お察し申しあげます。
何か良い方法がないか、少し考えてみます。
改めてメールにてお返事差し上げます。

投稿: Shuntasan | 2010年11月21日 (日) 16時21分

去年、10月北沢峠経由で甲斐駒ケ岳に登り、途中駒津峰からみた鋸岳に魅せられて登りたいと思い情報を収集している中で、教えていただきたくメールしました。甲斐駒経由だと、ルートに自信がなく、逆に、戸台から、広大なガラ沢を登り、第一高点のみ登り、同じルートで、戸台の方に帰ろうと思っているのですがどうでしょうか?岩登りはやった事がないのですが、山に登るのは自己責任と考えていますので、助言願いたいのですがお願いいたします。

投稿: 宮坂英史 | 2011年2月 5日 (土) 09時40分

宮坂英史さま
コメントありがとうございます。
縦走ではなく、お考えのパターンで鋸に登頂される方も多いようです。
そのルートの核心は戸台川の渡渉と予想されます。最低2度は渡渉することになりますが、角兵衛沢出合の渡渉ポイントは流れが速く、水量が多いと危険です。雪解け水の豊富な時期や大雨の後などは避けたほうが無難です。その他、技術的に特に難しいところは無いと感じます。角兵衛沢上部のザレた登りは、確かに体力を消耗しますが、踏み跡にこだわらす、歩きやすい部分を選ぶと良いと思います(ただし、不安定な石が多いのでご注意ください、尾根近くは落石に注意、環境にも配慮)。足の速い人であれば、日帰りは可能だと思いますが、大岩下ノ岩小屋または角兵衛沢ノ頭(上り詰めた鞍部)、角兵衛沢出合周辺で幕営する例が多いようです。第一高点の先、小ギャップあるいは鹿窓まで行って引き返すと、経験値が高まるかもしれません。リスクも高まりますが・・・。
勿論、縦走したほうが断然面白いのですが、ご案内の通り、リスキーな区間があり、力量に応じた判断が必要です。安全第一で山を楽しんでください。

投稿: shuntasan | 2011年2月 5日 (土) 20時32分

こんにちわ。

今年甲斐駒(黒戸経由)~釜無へ縦走予定の者です。
貴重な山行記録 拝見させていただきました。

2点ほど教えていただければ幸いです。

1、宿泊場所
   石室を予定はしているのですが、先に行ければ、とも考えています。
  石室と中川乗越間でツエルトビバーク(単独)できそうな場所はありますでしょうか?(一応水平に寝れられる場所で)
  また泊まられた、乗越は比較的快適な場所でしょうか?
2、水
  下から4.5Lを上げられたようですが、途中での補給は期待しなかった(できない?)のでしょうか?
  石室近辺や 乗越近くでも得られるという情報があるので。

お手数ですがわかりましたら教えていただけると助かります。

投稿: jabgy | 2011年3月22日 (火) 11時08分

jabgy様
コメントありがとうございます。
ご質問の件ですが、石室から先の戸台川側は切れ落ちていますが、甲斐側は樹木が生い茂り、所によりなだらかな場所があります。三ツ頭(烏帽子岳)周辺から中ノ川乗越の間にはビバークできそうな場所がいくつかありましたが、無積雪期は植生保護の点から勧めることはできません。中ノ川乗越周辺には、Web上には3か所ほど幕営できるスペースがあるとの記述があります。このうちの1か所は良いのですが、所によりガレた斜面の直下で、安心して休めないかもしれません。角兵衛沢の頭には良い場所がいくつかありました。
いずれにせよ、石室周辺も含め衛生環境の悪化が大きく問題視されていますので、特段の配慮が必要だと考えます。
水場ですが、ご存知のように石室の近くにあるそうですが、自分は確認していません。その先、鋸岳周辺は水が細く、天候によってはあてにならないと思います。持参すべき水の量は、大きな個人差がありますが、小生が4.5Lも持参したのは、美味しい水だったからです。猛暑でしたので、なおさらです。

なお、本年は種々の事情から、例年に比べて岩が不安定で崩落しやすい年だと予想しています。お気を付けください。

投稿: shuntasan | 2011年3月22日 (火) 21時43分

早速の回答ありがとうございます。

貴重な情報助かります。
なるべく石室に泊まるようにしたいと思います。
(ただ、何とか場所がある、と言う情報があるだけでも安心できます)

近年多くの人が入るようになって(私もその一人ですね)、衛生面も相当注意が必要なのでしょうね。
事前処理していきたいと思います。

見ず知らずの者に親切に回答いただき、真にありがとうございました。(私も山以外のサイトを持っているのですが、そちらで質問あれば同じようにしていきたいと思います)

投稿: jabgy | 2011年3月23日 (水) 08時48分

昔は、戸台までバスで入り、橋本山荘で朝飯を取り、戸台小屋(今は無いようですね)の前とダムまで降り、それからいよいよ、厳しい河原歩き。ただし、重たい水を持ち歩くことが無かったですね。赤河原まで昼近くになったような記憶があります。今は恐らく、夏に歩く人はないでしょうね。それから、大平小屋まで結構きつい登り。何回この道を往復で通ったか。当時は若かったので、今は無理でしょう。第一、戸台までバスは通っていませんので。

投稿: wy | 2015年10月25日 (日) 11時33分

wyさん
コメントありがとうございます。
南アルプス林道が開通し、北沢峠までバスが入るようになってから、戸台川のルートはあまり使われていないようですが、河原と林道の高低差(八丁坂)を上りあげるのはきつかろう想像しておりました。

投稿: shuntasan | 2015年10月27日 (火) 06時15分

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